●PARIS-11区 Benoît Castel Jean-Pierre Timbaudブノワカステル ジャン=ピエール・タンボ店

 1852年創業。フランス・パリ最古の百貨店として知られる「ボンマルシェ百貨店」(Le Bon Marché)。パリ7区の上品なエリアで一流のブランドが並ぶこのボンマルシェのデパ地下にあたる食品館、La Grande Épicerie de Paris(ラ グラン エピスリー ド パリ)にも、最高級の食品が世界中から集められている。ワイン、チーズ、シャルキュトリー、デリカテッセン、どれも超一流。ここのパンとパティスリーのコーナーに並ぶのは、ボンマルシェ特製の自家製のもの。フランスの有名新聞「ル・フィガロ(Le Figaro)」のグルメランキングにもたびたび登場するほど高い評価のパティスリーコーナーで、そのパティシエを務めたブノワカステル(Benoît Castel)氏が、自身の名前を冠して開いた店が「ブノワカステル」だ。
 ブノワカステルのお店はショコラトリー(チョコレートショップ)やカフェなどいくつかあるが、パンが買えるのは現在3店舗。広いカフェを併設した20区のメニルモンタン店、同じく20区の小さなカフェのソルビエ店(Sorbier)、そしてここ11区のジャンピエールタンボ店。

 11区のお店は下町感のある地域にとつぜん可愛い小さな店が現れるので少し驚くが、売られているパン・パティスリーは他の店舗と同じで、パリ中心部からも近いのでさっとパンを買いたい時に便利でよく訪れる。

 ブノワカステルで絶対に買いたいのは、「Pain d’hier et de demain(パンディエールエドゥドゥマン)」というカンパーニュ(田舎パン)。大きく無骨な格好で見た目で選ぶ人は少ないのでは?と思わなくもないが、是非味わってみてほしい。

 昨日と明日のパン。という不思議ネーミングは、このパンの材料が少し他と異なることを現している。材料にブノワカステルのアイコンパン「Pain du coin」を使っている。つまり、パンの材料にパンを使っているのだ。

 一度焼いたパンを再利用するといえば、フランスのパンペルデュ、イギリスのブレッド&バタープディング、イタリアのトルタディパーネ、ロシアのシャルロットケーキなどを思い出す。 フランスでは古いパンを使うといえば、前述のパンペルデュのようにパンの形を保ったまま使うことが多い。ところがドイツではゼンメルクネーデルというパンを団子にしてスープの具にしたり、スペインやポルトガル・メキシコで食べられるミガス(パンを崩してチャーハンのように炒める)、変わり種だとロシアのクワス(ライ麦パンなどを種として発酵させた飲み物)など、完全にパンの形から脱した再利用をする国がある。
 ブノワカステルは、これまでの様々な経験を活かし、フランスでは珍しいパンの再利用方法を長年研究し、このパンを作り上げたのだそうだ。

 パンとして一度焼かれた小麦粉は、グルテンを形成しないが水分をしっかり保つので、それを素材に加えるとぷるんとした独特の食感が生まれる(これはパンペルデュの食感を思い出すと想像しやすい)。日本のパン好きの方ならばシニフィアンシニフィエの「ドイチェ・ヴァイスハイト」を思い出されるかと思う。

 とにかくこのフランスでは珍しい独特の製法で作られた「Pain d’hier et de demain(パンディエールエドゥドゥマン)」は、一口食べれば他のパンとのあまりの違いに驚く。
 高加水でふるるとした食感、かといってべたべた余分な水分が残っているわけではないので、クラム(パンの中身)は軽やか。クラスト(外皮)は薄めでパリッと口溶けがよくて感じが良い。全体からはふわっとワイン臭がする。正確に表現すれば酸っぱくなった赤ワインやそのワインが入っていた樽のような複雑な匂いと酸味が漂ってくる。粉自体の味はあっさりとしてかすかに甘味はあるが、全体としてはワインやチーズによく合う食事がワンランク上がりそうなパンだ。いや、他の食べ物がなくても私はこのパンだけで贅沢な食事をしている気持ちになる。
 高加水パンのNo. 1だなと2021年5月現在、一位にランク付けしている。

これがブノワカステルの「Pain d’hier et de demain」
パンディエール エ ドゥ ドゥマン 、昨日と明日のパンという名前のカンパーニュ。
このパンがあれば、それだけでご馳走だなと思うおすすめのパン。
是非一度食べてみて欲しい。

 ちなみに、このパンはとてもカットしづらいのだが、柔らかいから・・・と11区のお店ではトランシェ(スライス)は断られる。20区メニルモンタン店ではトランシェしてもらえるので、遠くてもメニルモンタンで買いたいなぁという時がある。

++ Information ++

Benoît Castel(ブノワカステル)Jean-Pierre Timbaud(ジャン=ピエール・タンボ店)
https://benoitcastel.com/

[Open / 営業日時 ]
水曜日〜日曜日 営業
月・火曜日   定休日

[Adresse / 場所 ]
72 rue Jean-Pierre Timbaud
75011 Paris , FRANCE
01 48 06 70 59

[GoogleMap / グーグルマップ ]
https://goo.gl/maps/EFZhVXUKTHKQyr3G7

Pain d’hier et de demainの”素”となるパン、

ブノワカステルの「Pain du coin」パンデュコワンはこちら。

ブノワカステルを代表するアイコンアイテムの「Pain du Coin」(パンデュコワン)
小麦・石臼挽き小麦粉・ライ麦粉・マルメロの天然酵母・はちみつ・燻製塩(sel de Salish)のパン。
しっとりして弾力がややあるもっちり系で少しグルテンが多いかなと感じるカンパーニュ。はちみつは栗系のはちみつのようなしっかりとした香り。酸味が強くでないようにということで、マルメロの天然酵母を使っているそうなのだが、天然酵母の酸味臭が好きな私には少し物足りない。先にPain d’hier et de demainを食べてしまったので、かなり期待値が上がっていたからか、普通・・・と感じてしまった。
A PARIS
A PARIS

ブノワカステル メニルモンタン店の紹介は以下のページで。
「Fougasse aus 3fromages」「Tradition Chocolat」の動画を掲載しています。

パリ11区ブノワカステル
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