●PARIS-10区 Sain Boulangerie (サンブランジェリー )

 レピュビュリック広場(Place de la République)から少し北に歩いたところにあるサンマルタン運河(Canal Saint-Martin)。もともとはパリ市民に飲料水を届けるためにかのナポレオンが発案し、1825年11月4日に完成した全長4.55kmの運河だ。
 現在は、並木のある遊歩道にはさまれ、散歩やジョギングなど人気のレジャースポットになっている。

カナル運河

 騒々しいレピュビュリック広場周辺の雰囲気は、この運河を越えると一変して、穏やかなものになる。
 この運河から少し小道を入ったところにあるのが「サンブランジェリー(Sain Boulangerie)」だ。

サンブランジェリー外観

 運河の周辺は小さな小道が多く、ここも少しわかりづらい場所にあるのだが、数ブロック先から粉のふんわりといい香りが漂っているので、鼻を頼りに到着することもあるかもしれない。

Sain = 健康

という店名は、このお店の理念だそう。
厳選した小麦粉、BIO(ビオ・オーガニック/有機)の材料を使った、天然酵母(levain naturel ルヴァンナチュレル)のパン。
フードスタイリスト、デザイナーなど多ジャンルで活躍するオーナーシェフのAnthony Courteille氏が2018年に開いたお店。そう聞くと、マスコミ受けのいい流行を追ったパン屋だと思われるかもしれないが、店の場所、こじんまりとした店の雰囲気、周囲にたちこめる匂いを嗅ぐと、そうではないことがわかる。さらにここのパンを食べれば、オーナーシェフが誰だったかなんてすっかり忘れて、パンの味の印象しか残らない。

パリ10区・サンブランジェリー

 全てのパンの基本は、運河の名前を冠したサンマルタンパン(Pain St Martin)。シンプルなカンパーニュで、この店の味がよくわかる。1950年以前の品種の小麦粉を使用し、天然酵母でじっくり発酵させているそうだが、とにかく旨味が深い。口に入れるとじわじわと雑味と旨味、いろんな風味が鼻から滲み出てくるようなパン。酸味は強くなく、カットする時はかなり硬いと思うのだが、口にいれると不思議なほどに優しくほぐれていく。とにかく風味がとても複雑で、他に例えるのが難しいのだが、どこかで嗅いだことがあるような昔懐かしい感じに力強い味わいのパン。クラスト(外皮)は厚めでしっかりバリっと弾けるくらいによく焼いている、クラム(パンの中身)は少しぷりんとする感じの水分量。そして天然酵母のパンらしく、時間とともに味わいが変化し、時間が経つと酸味はくっきりし、野沢菜のような葉っぱものの漬物系というかさっぱりした感じの酸味臭を持つ。

パリ10区・サンブランジェリー

 また特徴的なのが、ここのパンの品揃え。
 フランスのパン屋では、バゲット・カンパーニュ・ヴィエノワズリーのジャンルごとに、どこの店でも同じ種類のパンを置くのが普通。日本のような具材を変化させた味付けパンはほぼない。ところが、サンブランジェリーの品揃えの多くは、パン生地の中に野菜やチーズなどを練り込んだ副素材入りのパンなのだ。

 ベーコンとポワローネギのパン、ズッキーニとヤギチーズのパン、茄子とアンチョビのパン、ピーナツとゴマのパン、カレー風味のくるみとカシューナッツのパン、アスパラガスのパン、タプナード(オリーブのペースト)と松の実のパンなどなど。季節によっても異なるが、ワインとパンだけで食事が成立してしまうようなパンが多い。
 日本のふわふわロシアパン系ではなく、ベースとなるリーンなカンパーニュ生地に素材を混ぜているので、ずっしりごろりとした無骨なパンが、特徴的な正方形の棚にずらりと並んでいる。ベーコンやアンチョビといった少し主張の強そうなものを組み合わせても存在感を失わず、しっかりパンの香りも残しながら、他の素材の味も十分に受け止める力のあるパンばかりだ。

 他にもRのつく月にはライ麦パンがあったり(魚介類にあうパンなので魚介類が美味しい季節にだけ・・ということだそう)、古代小麦のパン、パンコンプレ(全粒粉のパン)など粉の種類に特化したパンもある。クリスマスと年末限定にドライいちじく入りのライ麦パンがでたり、さすがにフードスタイリストであるオーナーシェフらしい食事を意識したパンが多くて面白い。

フランス語の12ヶ月(Rのつく月)は・・

1月 janvier(ジャンビエ)
2月 février(フェブリエ)
3月 mars(マルス)
4月 avril(アヴリル)

5月 mai(メ)
6月 juin(ジュアン)
7月 juillet(ジュイエ)
8月 août(ウッt)
9月 septembre(セプタンブル)
10月 octobre(オクトーブル)
11月 novembre(ノヴァンブル)
12月 décembre(デサンブル)


青色の月がRのついている月。逆に、Rのついていない月(5〜8月)は、牡蠣を食べるなと言われている。

パリ10区・サンブランジェリー


 他にもヴィエノワズリーや、パティスリーもある。パティスリーはパウンドケーキ・クッキー・チーズケーキなど、アメリカンテイストなものも多い。
 その中でクロワッサンは、ル・フィガロ紙が選ぶパリのベストクロワッサンに選ばれている(le Figaro , Les meilleurs croissants de Paris)。

ル・フィガロ紙が選ぶパリのベストクロワッサン第2位
パリのベストクロワッサン2位に選ばれた サンブランジェリーのクロワッサン

 このクロワッサンは、ご覧の通りのはしばみ色。
 じゅわっとバターが滲み出るバターたっぷりのクロワッサン。バターの香りがよく、乳製品の甘味が粉の甘味を引き出してバターケーキのような味。
 焦がしバターを使っているのだろうか、色と香りの力強さがすごい。夏はよりバターが柔らかくなり、生地にじんわり染み込んで、バタープリンとでも表現しようか、バター好きにはたまらない味。外側はパリっとサクッとしっかり焼けているので、中のバターじんわりのぷりっとした食感と混ざるとますます美味しい。バター大好きな人にはおすすめ、逆にあまり重たいものは・・という人には一つ食べるのが厳しいのではないかと心配するほどのバター感ナンバーワンのクロワッサンだ。

++ Information ++

Sain Boulangerie(サンブランジェリー)
https://www.sain-boulangerie.com/

[Open / 営業日時 ]
火曜日〜金曜日 7:30 am -14:30 / 16:15 – 20:00 pm
日曜日     8:00 am – 13:00 pm
月曜日は定休日です。

[Adresse / 場所 ]
13 Rue Marie et Louise,
75010 Paris FRANCE

[GoogleMap / グーグルマップ ]
https://goo.gl/maps/bXeWgSfAsDm52ibS9

サンブランジェリーのハシバミ色のクロワッサン

バターがじゅわっと滲み出てくる、バター感マックスのSain Boulangerie(サンブランジェリー)のクロワッサン。ル・フィガロ氏のパリのベストクロワッサン(le Figaro , Les meilleurs croissants de Paris)で第二位に選ばれたクロワッサンです。

 

▼2021/03/20、サンブランジェリーの天然酵母パン&お惣菜系パン。 追加UPしました!▼

サンブランジェリーのカカウェットパン(ピーナツのパン)

サンブランジェリーのシンプルなアイコンパン。
Pain Saint-Martin(サンマルタンパン)

サンブランジェリーのベーコン&ポワローネギのパン


サンマルタン運河をたどるとヴィレット貯水池に到着する。
ここはパリのウォーターアクティビティの中心地。

パリで海水浴気分を!!とスタートした夏の風物詩、「パリプラージュ(Paris Plages)」。
ヴィレットの様子はこんな感じです。

毎週日曜日にはサンブランジェリーのほんの目と鼻の先で
小さなかわいいマルシェが開かれている。

「マルシェアリベール(Marché Alibert)」

サンブランジェリーのパンの棚
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