●PARIS-5区 La Maison d’Isabelle(ラ・メゾン・ディザベル)

 最もパリらしいと言われるカルチェラタン(Quartier latin)の中央にあるモベール広場(プラスモベール・Place Maubert)。
 セーヌ川から数ブロック南へ、ノートルダム寺院からも歩いてすぐの場所にあり、観光客も多く訪れる場所。

 このモベール広場にある「ラ・メゾン・ディザベル(La Maison d’Isabelle=イザベルの家)」は、Isabelle Ledayさんと Geoffrey Pichardさんの店で、2018年のクロワッサンコンクール優勝店だ。

クロワッサンコンクールとは・・・


 フランス語で、Le Classement du Meilleur Croissant d’ile de France au Beurre AOP Charente Poitouという名称のコンテストで、最高品質であるAOP認定を受けているシャラント・ポワトゥのバターを使ったクロワッサンのコンクール。
 焼き(cuisson)、形(forme)、つや(brillance)、層(feuilletage)、味(goût)の5つの基準で評価される。

 店内に置かれたオーブンで次々に新しいクロワッサンが焼かれ、並べる暇もなくどんどん売れていく。広場周辺にはバターのいい香りが漂っている。さらに、この匂いにひかれて、多くの人がクロワッサンを買っていく。
 歩きながら焼きたてのクロワッサンを頬張る人を見ているだけでお腹が空いてきて、つい行列に加わってしまう。

ノートルダムからもすぐ近く・メゾンディザベル
クロワッサンコンクール1位と大きく表示された店

 正確に言えば、パンではなくヴィエノワズリーのジャンルに入るクロワッサンは、フランスのパン屋ならたいていどこでも買うことができる。シンプルで形もお決まりなヴィエノワズリーの定番。このシンプルなクロワッサンに、店の味がしっかりと反映されているのが面白い。

ヴィエノワズリーとは・・・


 フランス語で、Viennoiserie。ウィーンの(vienne)という名前の通り、ウィーンからパリに伝わった菓子パンの総称。

 1837年にAugust Zangがパリにウィーンのパン屋を開いたことがきっかけで広まったと言われている。

 小麦粉・水・塩のみで作られるパンとは違い、砂糖・バター・卵などが加わる。クロワッサンに代表される折り込み生地のパンや、ブリオッシュのように卵やバターも練り込んだふんわりしたパンのこと。発酵させた生地を使うことがお菓子との違い。

 代表的なヴィエノワズリーは、クロワッサン(croissant)、パンオショコラ(pain au chocolat)、ショーソンオポム(chausson aux pommes・りんごのパン)、パンオレザン(pain aux raisins)、ブリオッシュ(brioche)、パンオレ(pain au lait・牛乳パン)など。これらのヴィエノワズリーはたいていのパリのパン屋さんで買うことができる。

 メゾンディザベルのクロワッサンは、しっかりとバターの香りが残っていて、外側はパリっとよく焼けている。生地はパン屋のクロワッサンらしくグルテン多めの粉で、弾力とむちっと跳ね返るような歯応えもある。この生地の食感が強いバターの香りを引き立て、さらにパリっとした外側の軽快な食感が加わるので、しつこくないのに食べ応えがある。生地にはほんのり甘味があるので、軽い食事のつもりでも、おやつのつもりでも、どんな気分の時でもいける。

クロワッサンコンクール2018年優勝の
メゾンディザベルのクロワッサン。

ラメゾンディザベル(La Maison d’Isabelle)のクロワッサン(Croissant)

 ノートルダムの火災、コロナ禍と二つの災難が重なって、ノートルダム南側の飲食店街は大変厳しい状況が続いている。観光客が多く訪れていた店は、どこも閑古鳥が鳴いている。
 メゾンディザベルにも以前は多くの観光客が訪れていたが、観光客がいなくなった今も客足は途絶えていない。

ラメゾンディザベルのレーズンのライ麦パン
ラメゾンディザベルのセーグルレザン(seigle raisins)

 以前のように、クロワッサンを買う観光客がいなくなった替わりに、毎日の食事にパンを求める地域住民が慣れた様子で並んでいる。Bioのバゲットやカンパーニュ系のパンの品揃えも多い。

 セーグル(ライ麦)のパンの種類も多く、ライ麦好きには嬉しい。特に、セーグルレザン(seigle raisins)は、ゴツゴツした木の皮のようなパンで、平べったい形に打ち粉たっぷり、小ぶりなレーズンがぎっしり詰まっている。これは15区にあるラメゾンピシャール(La Maison Pichard)に似てとても美味しい。それもそのはず、ラメゾンディザベルのGeoffrey Pichardさんの父の店がラメゾンピシャールなのだ。

 定番のシンプルなカンパーニュ(campagne)、ルヴァン種のパン(levain )、雑穀のパン(cereales)、ドライいちじくのパン(パンオフィーグ・pain aux figues)やパンプキンシードのパン(かぼちゃの種・pain aux graines de courges)など、カンパーニュ系のパンの種類が多く、観光客だけではなく地域の人が毎日食べることを考えたパンをきちんと作っている。

メゾンディザベルのドライいちじくのパン。

ラメゾンディザベル(La Maison d’Isabelle)のパンオフィーグ(Pain aux figues)
見た目はゴツゴツと硬そうに見えるが、案外柔らかくふっくら。クラスト(外皮)は薄めでむちむちと口に残る。ドライいちじくがたっぷりで、パン生地にも甘味や色味が混ざり込んでいるが、見た目と違ってパン生地自体の味はプレーンで濃くはない。生地のきめが細かく、整ってしっとりしている。見た目と違って繊細系のパンオフィーグ。

メゾンディザベルのかぼちゃの種(パンプキンシード)のパン。

ラメゾンディザベル(La Maison d’Isabelle)のパンオグレンドクルジュ(Pain aux graines de courges)
 しっかりと焼けて、うまく水分が抜けているので、見た目よりとても軽やかなパン。パン自体はほんのり甘味を感じる程度で存在感は控えめ。たっぷりのパンプキンシードと、しっかり焼けてさくっとほぐれる厚めのクラスト(外皮)が加わって、軽やかなのに存在感のあるパン。

++ Information ++

La Maison d’Isabelle(ラ・メゾン・ディザベル)
https

[Open / 営業日時 ]
火曜日〜土曜日 6:00 am-20:00 pm
日曜日     6:00 am-18:00 pm
月曜日     定休日

[Adresse / 場所 ]
47ter Boulevard Saint-Germain,
75005 Paris FRANCE

[GoogleMap / グーグルマップ ]
https://goo.gl/maps/sVsfjjAKjSA5trjKA

メゾンディザベルの店の前で開かれるマルシェ。
マルシェ・モベール(Marché Maubert)はこんな感じ。

クロワッサンコンクール2018年1位
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