■パリのマルシェNo.79 – 20区 Réunion (レユニオン)

 パリで行われているマルシェは現在全80軒。全てのマルシェに、パリ1区(le 1er arrondissement de Paris)から歩いて行っている。セーヌ川を迂回しなければならない16区の最南西端を除けば、パリ1区からパリの端まではどこでも約1時間少々で到着する。


 パリ市の面積は105.40km2。ヴァンセンヌの森(Bois de Vincennes)とブローニュの森(Bois de Boulogne)を除くと86.99km2。
 東京の山手線の内側と同じぐらいだとよく言われるが、山手線の内側は63km2だそうで、パリの方が少し大きい。山手線と言われても関西人にはピンとこないので、大阪の環状線と比較するなら、環状線の内側は約30km2なので、パリは大阪環状線の内側の3倍に近い面積というところ。
 全てのマルシェを歩いてみて驚いたことは、環状線の内側3倍に満たない小さなパリ中で、これほど雰囲気が変わるものかということ。どのマルシェにもそれぞれのカラーがある。マルシェが開かれる場所やその地域に暮らす人の特徴が現れているのだ。マルシェにくる人々の人種や服装、しゃべり方、年齢などに合わせ、扱われる品物の種類、価格、品質、売り手の話し言葉までも異なる。

 お察しの通り、根っからの関西人なので粗野な話し方やごみごみとした雰囲気は苦手ではない。安全云々を別にすれば、一般的に避けるべきといわれるエリアのマルシェも、人には勧めないが自分が買い物する分には問題がないと思うところもある。と、少々趣味嗜好に偏りがあることを前置きするが、全マルシェの中で一番好きなマルシェを挙げるならばこのレユニオンマルシェだ。

 パリ東部、住宅がメインの落ち着いた地域。有名な場所といえばマルシェからレユニオン通り(Rue de la Réunion)を北に500mほど歩いたところにあるペールラシェーズ墓地ぐらい。


ペールラシェーズ墓地とは・・・

フランス語でCimetière du Père Lachaise。多くの著名人が埋葬されている。フランスで最も愛されたシャンソン歌手エディット・ピアフ(Édith Piaf)、子犬のワルツやポロネーズ、ノクターンなどで知られる作曲家ショパン(Frédéric François Chopin)、オペラ「カルメン」やアルルの女が有名なビゼー(Georges Bizet)、20世紀最高のソプラノ歌手マリア・カラス(Maria Callas)、アメリカのロックバンドドアーズのボーカルであるジム・モリソン(Jim Morrison)などが眠っている。

特にマルシェレユニオンから、エディットピアフの墓までは約550m・徒歩7-8分程度で一番近い。

パリ20区のマルシェレユニオン
噴水が中央にあるレユニオン広場


 マルシェ・レユニオンは、週に2回、レユニオン広場で開催されている。広場中央にある噴水は1970年代に彫刻家アーネスト・キャリエ・ベルーズ(Albert Ernest Carrier Belleuse)によって作られたもので、当初は緑色の彫刻だった。それを2010年から3年をかけ地元の学校が黄土色に塗り替え、色とりどりのペレットでかざり、現在はカラフルなものになっている。
 なるほど、初めて見た時に違和感を感じたのだが、そういうわけかと腑に落ちた。塗り替え直後の寺社仏閣を訪れた時のような、ちぐはぐな感覚。ところがこの広場を何度か訪れているうちに、この噴水がなんともこの地域にふさわしく輝いていると思うようになった。
 パリ中心部と違い通り沿いにも店舗や人が少なく、静かなエリア。落ち着いた住宅街の中にあるこのレユニオン広場には、マルシェの日こそ多くの住民が集まるが、普段は子供たちが遊んだり、高齢者がよもやま話をして日がな一日ゆっくり過ごすのんびりとした光景が広がっている。パリの中ではかなり静かで落ち着いた雰囲気の場所だが、左岸(=セーヌ川の左(南側)いわゆる高級地域)のそれとは違う。若々しいといおうか、生き生きした静けさというか、また違った静けさがある。右岸は郊外に近づくと移民色が濃くなりやや荒廃したような雰囲気になる場所が多いが、このあたりにはその雰囲気はない。
 程よく若い世代から高齢者までが住まい、適度に人種もミックスされた地域で、それが和やかに調和している。もしこの噴水の色が従前のオーソドックスな彫刻らしいカラーであれば、それほどこの場所が印象的にならなかったのかもしれない。子供(putti)がモチーフのクラシックなデザインが、鮮やかな黄色で塗り替えられ、色とりどりのペレットが無造作に貼り付けられた状態が、今のこのエリアの特徴をよく表していると思う。

マルシェレユニオン・ピザ屋さん

 レユニオンマルシェは木曜日と日曜日の週に2回開催される。木曜日は衣類や日用雑貨が多く、店の数も少ない。客も一人一人、のんびりと買い物をしたり、知り合いを見つけては立ち話をしている。
 日曜日は、店の数も人の数も格段に増える。広場から続く通りまで店が並び、扱う商材の種類も野菜果物だけではなく、肉・魚・チーズ・パン・シャルキュトリー・惣菜・ピザ屋・ワインなど多種多様なものになる。1週間分の食材を買い込み、今晩のご馳走に魚介類やワイン、帰ってすぐに食べる昼食用に惣菜やピザをと・・家族揃って買い出しにくる人々でとても賑やかだ。
 新鮮で値段も手頃、いい具合に混雑し、品揃えが豊富なマルシェ。人種も適度にミックスされて、子供も大人も高齢者も偏りなく皆が楽しそうに、ちょっとせわしなく行き来している、今のパリらしい理想のマルシェの風景が繰り広げられている。

L’église Saint-Jean-Bosco
サン-ジャン-ボスコ教会(Eglise Saint-Jean-Bosco)

 ちなみに、このレユニオン地区は、イギリスの新聞ザ・ガーディアン(The Guardian)が選ぶ「ヨーロッパの素晴らしい10の地区」に選ばれている。
かつてぶどう畑だったレユニオン地区には、現在もワインセラーや植物に囲まれた場所が点在している。地域の特徴や特徴を残しながら、今も輝いている場所として選ばれたようだ。目立った観光スポットや有名な場所でもないこの地域がヨーロッパの素晴らしい地区に選ばれている理由は、ここに行かないとわからないかもしれない。

マルシェレユニオン近くル・ブリシュトン
素通りしてしまいそうなパン屋さんっぽくない外観のル・ブリシュトンだが、開いている時はたいてい行列ができているのですぐにわかる。


 もしこのマルシェに行くことがあるのであれば、アレクサンドル・デュマ通り(Rue Alexandre Dumas)にある真っ白な教会「サン-ジャン-ボスコ教会(Eglise Saint-Jean-Bosco)」と、マルシェからほんの100mほどレユニオン通りを歩いたところにあるこだわりの天然酵母パン屋「ル・ブリシュトン(Le Bricheton)」(50 Rue de la Réunion, 75020 ParisFRANCE)に立ち寄るのをおすすめする。


サンジャンボスコ教会とは・・・

フランス語でEglise Saint-Jean-Bosco。(住所:79 Rue Alexandre Dumas, 75020 Paris / FRANCE)。

 マルシェの動画の中にも真っ白な鐘楼が映っているが、高さ53mの鐘楼をもつカトリック教会だ。1933~1937年に建設されたアールデコ様式(Art Déco)の建物。
 アールデコ様式は、1925年にパリで開催された現代装飾美術産業美術国際博覧会(Exposition internationale des Arts décoratifs et industriels modernes)が発端だが、パリでは盛んにならなかった。そのため、パリでアールデコ様式の建物を見かけるのは珍しい。
 代表的なアールデコ様式の建築物にニューヨークのクライスラービルがあるが、この鐘楼をみると確かに共通点を感じる。

 アレクサンドルデュマ通り(Rue Alexandre Dumas)にある教会の入り口には、ジョルジュセラズ(Georges Serraz1883-1964)による 子供を抱いた聖ヨハネボスコの像(saint Jean Bosco)がある。教会内部は、パリの教会の中でも特に装飾的な教会の一つと言われるほど、多くの美術作品が残っている。壁画・フレスコ画・ジャンヌダルク(Sainte Jeanne d’Arc 1Vitrail )を含む数々の聖人のステンドグラス・「キリストの洗礼(Le Baptême du Christ)」や「十字架の道行(Chemin de croix)」のモザイク画・彫刻・パイプオルガンなど多くのものが残っている。

 

5区 Marché Réunion(マルシェ レユニオン)
information

[Adresse / 場所 ]
Place de la Réunion
75020 Paris, FRANCE
(Métro 2 – Alexandre Dumas)

[Métro / 最寄駅 ]
Buzenval, ligne 9

●Googleマップ:
https://goo.gl/maps/MFCVEtr2cpqVDSVK7


●パリ市マルシェ情報:
https://www.paris.fr/equipements/marche-reunion-5534


●開催日時:
木曜日 07:00 – 13:30
日曜日 07:00 – 14:30

木曜日のマルシェ・レユニオンはこんな感じ

2020年8月6日木曜日の レユニオンマルシェ

日曜日のマルシェ・レユニオンはこんな感じ

2021年2月21日日曜日のレユニオンマルシェ


パリで最もパリらしいマルシェ・レユニオン
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